京都市北部、左京区・北区北山通の南側に広がる広大な文教地域は、府立植物園や府立大学、コンサートホールなどが立地し、文化芸術の発信拠点、府民の憩いの場として親しまれてきた府民の貴重な財産です。
京都府はいま、この一帯を「北山エリア」として位置付け、1〜2万人規模のアリーナ(体育館)や劇場と一体に、ホテル・飲食店等の「賑わい・交流施設」を整備するなど新たな大規模開発に乗り出そうとしています。
また、「民間活力導入についてポテンシャルがある地域」だとして、基本計画策定そのものを、東京のコンサルタント会社に委託してまとめ、しかも計画は府民にほとんど知られていません。このまま進めていいのでしょうか。
キャンパス全体の老朽化が深刻となっている府立大学。体育館も今、授業で使えません。これに対し1〜2万人収容できるアリーナを整備し、国際大会やコンサート等の大規模イベントにも活用しようという計画です。これでは学生の利用が制限されイベント優先になるのでは? 1万人規模のイベントが頻繁に開かれると学生も周辺住民も大変です。
京都府がやるべきは、学生や教職員の要望に応えて、危険な老朽学舎の改築等を急ぐことではないでしょうか。
「北山エリア」全体の3分の2を占める府立植物園は、1万2千種・12万本の植物を保有する日本有数の公立総合植物園で、世界各地から収集した種子を発芽させ、育て、花を咲かせるなど、「生きた植物の博物館」として、国際的にも高い評価を得ています。職員の皆さんが長年の努力で培ってきた栽培技術の賜物であり、これを保障するのが府直営のしくみです。
北山通沿いの木を切り商業施設をつくる、大芝生地に屋外ステージ・バックヤードの縮小など、「にぎわい」を口実としたイベント優先では困ります。管理運営も集客優先ではなく、府直営を維持すべきです。
アリーナだけで150億円との試算もあり、旧総合資料館跡地に整備する舞台芸術・視覚芸術拠点施設(シアターコンプレックス)や賑わい交流施設(コンベンション・ホテル・飲食)などもあわせれば、全部で数百億円という規模の大事業です。
府は、「官民連携の手法を取り入れ、そのことで府民負担を抑えたい」としていますが、本当でしょうか。民間企業は利益を期待して参入するわけですから、儲かるかどうかが事業の基準となり、そのために事業規模が膨れ上がったり、儲からない部分が切り捨てられたりしかねません。うまくいかなければ赤字補てんが迫られ、かえって府民負担が増える危険もあります。
開発計画イメージ図
北山エリア整備構想を考える懇談会